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■秋なのできのこに座る黄色い小人
隔月公開の DDBJ メールマガジン第22号 web 版です。
今回は記事が長いので,もくじを載せておきます。
写真は国立遺伝学研究所内にある桜の幹に生じたきのこです。
DDBJ/EMBL/GenBank 国際塩基配列データベースで収集・提供している塩基 (DNA, RNA) 総数が2005年8月に100ギガ(1000億)塩基を超えました。
これは,欧州の EMBL Bank,米国の GenBank そして我が国の DDBJの3者相互による,国際データ交換によって到達した快挙といえます。
なお,3者のデータバンクの総称は,今後
International Nucleotide Sequence Database Collaboration(INSDC,国際塩基配列データベース共同体)
とすることになりました。
国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ 研究センターの五條堀孝センター長は以下のようなコメントを発表しています。 「国際塩基配列データベース共同体はその基礎を,様々な生命情報を互いに交換し合う,と言う点に置いてきた。 システムズバイオロジーの時代となった今,研究者達も,幾千もの遺伝子についての研究の成果やコンピュータによるモデル作成といったようなことに関する複雑で多様な情報を互いに交換しあうようになってきた。 “生命情報を互いに交換し共有しあう”と言う点から見ればパイオニア的存在にある3つのデータバンクが,この素晴らしい偉業を達成したことは,実に重要な意味を持つものである」 また,EMBL Bank の母体である EBI(欧州バイオインフォマティックス研究所) のグラハム・キャメロン副所長も,次のような談話を発表しています。 「これは,国際塩基データバンクの歴史において重要な到達点である。 最初の EMBL Bank の前身である EMBL データライブラリーは1980年に創設されたが,その最初の登録から,今日の少なくとも20万種類の生物から得られた5,500万配列に昇るデータは,世界中の分子生物学者の要求に応えもるのである」 NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター・GenBank の母体) のデビッド・リップマン所長も次のように述べています。 「今日の塩基配列データベースのおかげで,研究者達は,完全ゲノムの情報や生態系の遺伝的構成要素,特許に関連した配列情報などを共有できるようになった。 国際塩基配列データベース共同体 (INSDC) は,塩基配列に関する情報を可能な限り世界的規模で共有することで,塩基配列情報に関するこのプロジェクトを始めた研究者達の夢を実現させたのだ」 国際塩基配列データベース共同体 (INSDC) は1980年に EMBL と GenBank がその活動を開始し,DDBJ も1987年より活動に加わりました。 DDBJ は,これまで日本を中心に世界各国の研究者からのデータ登録を受け付け,他の2バンクとデータの相互交換を行いながら国際塩基配列データベース共同体の発展に貢献してきました。
イネゲノムは,既に2004年12月に日本を中心とする国際イネゲノム配列解読コンソーシアム (IRGSP) によって,「日本晴」ゲノムの完全解読が終了していましたが,その後同コンソーシアムは,解読されたゲノム配列情報を基に解析をおこない,その結果が8月11日発行の英科学誌
Nature (vol.436, pp.793-800; Aug.11, 2005)
に発表されました。
独立行政法人農業生物資源研究所(茨城県つくば市)と社団法人農林水産先端技術産業振興センター(東京都港区)によると,解析の結果,イネの遺伝子は3万7544個,全体の71%は既にゲノムの解読が完了している双子葉植物のシロイヌナズナ (Arabidopsis thaliana) と共通しており,8%は双子葉植物にはない,イネなどの単子葉植物に特有のものと思われます。 このゲノム配列情報は,国際塩基配列データベースにアクセッション番号 AP008207-AP008218 で登録されており,DDBJ の getentry で取得することができます。 IRGSP には,Annotation and Analysis 担当として,CIB-DDBJ より五條堀孝(生命情報・DDBJ 研究センター長),岩間久和(2004年10月まで所属。現:香川大学総合情報基盤センター助教授)が参加しており,上記論文にも名前が掲載されています。 参考 プレスリリース(独立行政法人 農業生物資源研究所) IRGSP (International Rice Genome Sequencing Project) DDBJ その他の生命情報リンク:生物ごとのデータベース(イネ) 更新情報 (Build4.0)(2005.8.31)
チンパンジーの全ゲノム情報の概要が米国の研究チームによって解読され,その結果が9月1日発行の英科学誌
Nature (vol.437, pp.69-87; Sep.1, 2005) に発表されました。
チンパンジーはヒトに最も近い生物で,ヒトゲノムとの比較によりヒトの進化のメカニズムや機能の解明が進むことが期待されます。 この塩基配列は,Whole Genome Shotgun データとしてDDBJ/EMBL/GenBank 国際塩基配列データベースに登録されており, getentry で取得することができます。また, FTP を利用したリリースデータ取得のページ の「WGS データ (AACZ.gz, AADA.gz)」 よりダウンロードすることができますので,どうぞご利用下さい。 なお,WGS についての詳細はこちらをご覧下さい。 チンパンジーのゲノム解読については,昨年5月に理化学研究所を中心とする国際チンパンジーゲノム22番染色体解読コンソーシアムが,チンパンジーの22番染色体のゲノム解読データを同じく Nature に発表しています。
日本の理化学研究所を中心としたマウスのゲノムおよびトランスクリプトームを網羅的に研究している国際コンソーシウム (FANTOM Consortium) はヒトおよびマウス転写物 (transcripts) に関する統合的な解析の成果を9月2日付けの,
Science (vol.309, pp.1559-1563; Sep.2, 2005),
Science (vol.309, pp.1564-1566; Sep.2, 2005) に発表しました。
生命活動の維持に不可欠なタンパク質をコードする転写物(遺伝子)のみならず,タンパク質を作らない転写物 (non-protein-coding RNA: ncRNA) がマウスおよびヒトにおいて多数見いだされました。 これら多数の ncRNA がタンパク質をコードする転写物の発現を調節することが示唆され,哺乳動物における遺伝子の発現調節機構に関して重要な知見が得られました。 FANTOM Consortium には,CIB-DDBJ より五條堀孝教授(生命情報・DDBJ 研究センター長),池尾一穂助教授他が参加しており,上記論文にも名前が掲載されています。 また,上記の論文には ゲノムネットワークプロジェクト の成果の一部が含まれています。 この論文に使用された約200万の EST (expressed sequence tag),約11万の HTC (high throughput cDNA sequence) および約880万の MGA (Mass sequence for genome annotation) エントリの配列情報は,国際塩基配列データベースに登録・公開されており,DDBJの検索ツール getentry でデータを閲覧・取得することができます。 参考 理化学研究所プレスリリース FANTOM Database 配列のアクセッション番号リスト;理化学研究所ゲノム科学総合研究センター遺伝子構造・機能研究グループ
独立行政法人医薬基盤研究所
遺伝子バンクでは, 国立遺伝学研究所 生命情報・DDBJ 研究センター
遺伝情報分析研究室,
東京大学医科学研究所
・ゲノム情報応用診断部門および
東京大学大学院新領域創成科学研究科
・ゲノム制御医科学分野
との共同研究の成果として,カニクイザル cDNAデータベース (QFbase) を開設しました。
カニクイザルは様々な実験動物として幅広く用いられているサルであり,今後の医学・薬学研究および霊長類ゲノムの進化解析に非常に有用であると考えられます。 このデータベースには,オリゴキャッピング法によって作製されたカニクイザル脳・肝臓・精巣由来 cDNA クローンの5'または3'末端塩基配列約85,000が登録され,BLAST 検索やヒト遺伝子との相同性に基づいたアノテーションにより目的のクローンを探すことができます。 また,約4,000遺伝子については cDNA の全長配列が決定され,約1,700遺伝子についてはヒト遺伝子との塩基配列の比較情報が含まれています。 ヒト遺伝子との相同性検索の結果,このデータベースの全クローンはカニクイザル全遺伝子の半分程度を含んでいると予想されます。 これらのクローンの大部分は, ヒューマンサイエンス研究資源バンク (HSRRB) を通じて供給が行なわれており,機能解析などの実験に用いることができます。是非ご利用ください。 また,このデータベースに登録されている配列は,「DDBJ/EMBL/GenBank 国際塩基配列データベース」にアクセッション番号 BB873801-BB894695 (20895 entries 3'EST配列),CJ430287-CJ493524(63238 entries 5'EST配列)で登録されており,DDBJ の getentry で配列を取得することができます。 QFbase へは遺伝子バンクトップページ のリンクよりアクセスすることができます。 また,DDBJ HP の 生命情報・DDBJ 研究センターの生命情報 web リンク, ならびにその他の生命情報リンク:生物ごとのデータベース(その他の哺乳類) にも紹介されています。
DDBJ HP に次の項目を追加しました。
国際塩基配列データベース実務者会議での決定により,MGA (Mass sequence for Genome Annotation) データの公開形式が一部,変更されることになりました。
対象は Variable record で,各エントリ間に表示されていた "//" 行を削除します。
下記が変更内容となっておりますので,データを取得の際にはご利用者の皆様におかれましてはご注意いただきますよう,お願い申し上げます。
DDBJ が管理・収集している塩基配列データベースは,リリースとして定期的に年4回オンライン上で公開しています。
9月30日に DDBJ リリース63 を完成しました。
リリース63 のエントリ数は 47,741,593,総塩基数は 52,246,110,341 塩基です。
この他に現在公開中のデータベースは以下の通りです。
FTP による定期リリースおよび新着データのダウンロードサイトは
こちらです。
・DDBJ date-----------DDBJで公開した日付
DDBJ では全国各地で「DDBJing 講習会」を開催しています。
DDBJing 講習会は,塩基配列の登録方法や DDBJ が提供しているデータベース検索・解析サービスをユーザの方々により深く理解して利用していただく助けになることを目指しています。9月1-2日にかけて東京農業大学で 第13回 DDBJing 講習会 in 東京農大 を開催しました。 今回は東京農大関係者のみを対象として講習を行ない,約60名の参加がありました。 一般募集は行ないませんでしたが,講習会で使用した資料は ダウンロードページ から取得できますので,どうぞご利用下さい。 次回の開催は未定ですが,開催に関するおしらせはこのメールマガジンとホームページ上でご案内いたします。 また,開催のご要望がありましたら検討いたしますので,以下のメールアドレスにお問い合わせ下さい。 ddbjing@ddbj.nig.ac.jp
DDBJ, EMBL-Bank/EBI, GenBank/NCBI の3大国際 DNA データバンクは,国際塩基配列データベース共同構築の運営・推進を図るために,国際実務者会議を年1回開催しています。
2005年は DDBJ で 5月16日から18日に開催され,DDBJ, EMBL, GenBank 三極の活動の年次報告が行なわれた後,国際塩基配列データベース運用上の実務的な問題を以下のように討論しました。 検討事項と今後の課題
前回のメールマガジンでもお伝えしましたが,DDBJ が web 上で提供するキーワード検索システム
SF gate-WAIS と
web および 数値計算サーバ minerva 上で提供している塩基配列・アミノ酸配列多重整列プログラム
malign
は本日2005年9月30日をもってサービス終了いたします。
今後はキーワード検索には SRS や ARSA を, 多重整列には ClustalW (clustalw@nig.ac.jp) をご利用いただけると幸いです。 これまでご利用下さいましてありがとうございました。
その正体
隅山 健太 ある日,当時二歳だった娘が公園で,オシロイバナの種といっしょに,同じくらいの大きさの小さな赤い玉を拾ってきた。 娘はこれをいたく気に入ったらしく,かわいい,かわいい,といって一日手放さず,ついに夜眠る時に布団の中にまで連れていくほどであった。 娘にとっては,これは自分を楽しませるために世界のどこからかやってきたお友達であったのだろう。 実際のところ,この赤に着色された直径数ミリの樹脂製の球体はBB弾と呼ばれるモデルガンの弾である。 Wikipedia によれば,「材質はプラスチック,または生分解性プラスチックで,直径は通常 6mm だが,マルシン工業独自の規格として 8mm も存在する。 主にエアソフトガンで使用されるが,近年は銀玉鉄砲に使用されるケースも多い。1980年代にマルゼンによって実用化された。 これによって命中精度は向上し,またその形状からマグヌス効果を利用した有効射程を延ばす機構『ホップアップシステム』が考案される等,エアソフトガンの性能向上において果たした役割は非常に大きい。 サバイバルゲームを行なったであろう公園などによく落ちている。」 とある。 恐らくある種の人にとっては,6ミリの球体という情報と,公園に落ちていたという事実だけで,こうした情報をすべて瞬時に思い浮かべることはたやすいことだろう。 受け手が既に持っている知識を前提とすれば,ごくわずかな事実の組み合わせで多くの情報を想起させることができる。 だが,受け手がそのような情報を持たない,あるいは失ってしまった場合にはどうだろうか。 インターネットなどで検索してほぼ同じ情報を得ることはできるかも知れないが,それには一定の時間と労力を要する。 もし検索で情報が見つからなければ,6ミリ,球体,公園という事実が残るだけである。 その場合情報の読み手は6ミリ,球体,公園という情報から,モデルガンとは無縁な全く新しい発想と展開を行うかも知れない。 ある時点で情報の集積が行われた後,受け手側が共有する知識がシフトしていくとき,客観的には同一の情報が大きく違う意味として捉えられることが起きうるだろうし,それはむしろ新しい科学を産み出す種として歓迎すべきなのかも知れない。 ただし,その代償として,当初「自明」であるがために記述されなかった情報に包含される関係性は消滅してしまう。 1000年後に,昔の公園には6ミリ程度の赤い玉が大量に散らばっていたという事実を考えるとき,それが儀式に用いるために作られた赤米の代用品であった,などという推論が出てもおかしくはない。 事実の情報が集積され提供されるとき,それが孕むメディアとしての性質は重要で,どのように事実の情報が選ばれ提示されるのかが,その情報を新たに出発点とする受け手側に与えていく影響は小さくないだろう。 今私の手許には,研究中に拾い上げた「AGATAAATTAC」という配列がある。 娘の赤い小玉の場合とは違い,私に本当のことを教えてくれる情報源はない。 謎が残ったままなのは残念だが,私はこの配列をとりあえず「かわいい」と思うことにする。 ddbjmag@ddbj.nig.ac.jp
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Last modified: Oct. 07, 2011
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