DDBJ をご利用いただいている方々の関心事は,多くの場合,ゲノム,mRNA,タンパク質をコードする遺伝子ではないでしょうか。もちろん,分子系統学などの視点から rRNA に関心を持つ方々も多いことでしょう。ここに挙げた情報を記述するだけで良いのでしたら,feature の項目は大まかに mRNA, CDS, rRNA と塩基配列の由来を示すための source だけで済むことになります。
しかし,実際には Feature Table Definition Document (以下,FT-Doc) において定義されている DDBJ/EMBL/GenBank が公式に認める features の数は 62 あります。
FT-Doc は毎年4月と10月の2回改訂されます。この FT-Doc 改訂に関しては,主として,DDBJ/EMBL/GenBank が毎年1回開催しております国際実務者会議(International Collaborators Meeting) において改訂の方針を集中協議して決定します(参考:第20回国際実務者会議報告)。後に各実務担当者がその施行に関する詳細をメールなどにて協議し決定します。
FT-Doc で定義される features は,2007年10月の改訂前には 65 ありました。これは単純に3つ廃止されたということではありません。実際には5つが廃止され,2つが追加されています。データベースは,単に登録データを収集し提供するだけではなく,時代の要請に歩調を合わせて,その在り方を変える努力もしています。
今年(2007年)の国際実務者会議では,「多様な新しい RNA 転写産物を,どう記述すべきか?」が主要な話題の一つでした。近年,miRNA,siRNA などの多様な RNA 転写産物が見出され,その知見も増加しております。今年の改訂前までは,比較的新しい RNA 遺伝子は,すべてmisc_RNA,つまり「その他の RNA 」を示す feature で記載していました。しかし,このような暫定的な方法による対応では,登録者・参照利用者の需要に応えることが困難になっていました。

そこで,この問題を解決するために,新規に2つの RNA を示す features である ncRNA と tmRNA を追加することを決定しました。タンパク質をコードしない RNA ファミリー数は増加することが予想されるため,ncRNA feature に統合します。これに伴い,snRNA,snoRNA,scRNA の3つのfeatures を,2007年12月(今月)までに ncRNA feature に統合します。また,これまでは misc_RNA で記載されている既存データのうち ncRNA,または,tmRNA とすべきデータも適宜,修正します。

このような過去のデータを新規則に合わせる修正をレトロフィットと呼んでいますが,毎年,10月に新 feature を記載可能にするようにデータベースシステムを修正し,12月までに既存データのレトロフィットを行うことが定例になっています。今回のレトロフィットは RNA world に関するパラダイム変化を象徴していますので,ここに紹介いたしました。

第20回国際実務者会議報告より抜粋)
  • 新 feature ncRNA が追加されます。
    近年,"miRNA","siRNA" などの多様な新しい RNA 転写産物が見出されています。このようなタンパク質をコードしない RNA ファミリー数は増加することが予想されるため,新規に,柔軟な対応が可能な ncRNA feature を追加します。
    また,これに伴い,snRNA,snoRNA,scRNA の3つのfeature は,2007年12月までに ncRNA feature に統合されます。
  • /ncRNA_class が追加されます。上記の新規 feature,ncRNA では,non- protein-coding RNA の種類を示すために,新規 qualifier,/ncRNA_class を使用します。

    書式: /ncRNA_class="<ncRNA_class_TYPE>"
    例 : /ncRNA_class="miRNA"

    <ncRNA_class_TYPE> は以下の規定値リストから選択されます。
    "antisense_RNA" "autocatalytically_spliced_intron" "telomerase_RNA"
    "hammerhead_ribozyme" "RNase_P_RNA" "RNase_MRP_RNA"
    "guide_RNA" "rasiRNA" "scRNA"
    "siRNA" "miRNA" "piRNA"
    "snoRNA" "snRNA" "SRP_RNA"
    "vault_RNA" "Y_RNA" "other"


  • 新 feature tmRNA が追加されます。
    tRNA と mRNA の両方の性質を持つ RNA を記載するため,新規に tmRNA feature が使用可能になります。tmRNA に関する情報は,tmRDBtmRNA Websiteに詳しいので,ご参照ください。
  • 新 qualifier /tag_peptide が追加されます。
    tmRNA のタンパク質分解タグペプチドに対応する塩基位置を示すために,tmRNA feature で新規 qualifier /tag_peptide が使用可能になります。

    書式: /tag_peptide=<base_range>
    例 : /tag_peptide=90..122
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