Genomic Standards Consortium(GSC)が ゲノム・メタゲノムの記述に関する新規のガイドライン”Minimum Information about a Genome Sequence (MIGS)”を創設し,論文にまとめ,Nature Biotechnology (5月発行)に掲載されました。 また,論文発表に合わせて,GSC が Press release を行ないました

Genomic Standards Consortium(GSC) が Genomic Standards Consortium(GSC) は,主要なゲノムセンターならびに生命情報機関の代表者が名を連ねる国際的な組織であり,DDBJ バンク長の舘野義男もそのメンバーで,論文の著者の1人にもなっています。 以下は,Press release の日本語要約です。

2008年5月9日付プレスリリース
世界の主要なゲノムならびに生命情報機関の代表者をメンバーとする Genomic Standards Consortium(GSC)が ゲノム・メタゲノムの記述に関する新規のガイドライン"Minimum Information about a Genome Sequence (MIGS)"を創設し,Nature Biotechnology に発表しました。
発表された新規ガイドラインは,最小限の情報 (MI) の表示規範です。 ゲノム配列決定技術の進歩に伴ってゲノムならびにメタゲノム配列決定プロジェクトの数は加速度的に増加し,ゲノムデータの量も右肩上がりで増加しています。大量データのデータベースへの蓄積と有効利用のためにはデータの電子化は必須であり,それゆえ MIGS のような共通の規範の設定がますます必要不可欠なものとなっています。
公共データベース中といえども,ゲノム・メタゲノムの情報の記載が不十分なものも多く,特に,近年,驚異的なスピードで増加中の環境サンプルにおいてその傾向が顕著です。GSC はこれに対応するためも,このプロジェクトを立ち上げました。
最近では様々な MI standard が発表されていますが,それらに比べて,MIGS は容易に使用可能で,実際,最近 MIGS を使用したケースが多数確認されています。 この論文の主たる著者でありGSCの創設メンバーである 英国 Ecology & Hydrology Center のDr. Dawn Field は,「いつでも誰でも GSC への参加を歓迎する」と述べています。
GSC とは?
GSC(Genomic Standards Consortium) は,2005年9月に設立され,ゲノムデータの記述を標準化することにより,データの相互利用と統合化を促進することをめざしています。 メンバーには, DDBJ,EMBL,GenBank の国際塩基配列データベースを構築する3つのデータバンクをはじめとして, JCBI,JGI,EBI,Sanger といった世界をリードするゲノム研究機関の研究者達が含まれており,彼らは, ゲノムデータベースの構築や大規模比較ゲノム研究に携わる生物学,コンピューターサイエンスの両分野から,これまでの経験を生かして,標準化のためのルール作りとその啓蒙に貢献しています。
MIGS について
MIGS (Minimum Information about a Genome Sequence) は,真核生物,バクテリア,古細菌,細胞小器官,プラスミド,ウイルス等のゲノム情報を記述するものです。MIGS を用いることによって,核酸の由来,生物が置かれている環境,試料を採取した日付や時間,試料の採取や配列決定の手順,といったゲノム情報を特定するにあたっての決め手となる部分を可能な限り記述することができます。将来,シークエンサー等のテクノロジーの進歩によって変化する可能性はあるものの,大規模ゲノム時代の到来によって,今後ますますその重要性が高まると考えられます。
Reference
Nature Biotechnology 26, 541 - 547 (2008)
"The minimum information about a genome sequence (MIGS) specification"