3月24日に慶應義塾大学三田キャンパスにて一般の方々を主な対象とした講演会 「ゲノムを知る」が開催されました。 この講習会は情報知識学会主催, 国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ研究センターと国立情報学研究所後援で開催され, 175名の参加がありました。 当研究所生命情報・DDBJ研究センターの菅原秀明, 五條堀孝が講師として参加しました。 以下は菅原による報告です。

講演会「ゲノムを知る」報告
菅原秀明(国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ研究センターは講演会「ゲノムを知る」に協力しました)
国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ研究センターは国立情報学研究所とともに, 情報知識学会が開催した講演会「ゲノムを知る」を後援しました。 この講演会は一般の方々を対象として3月24日(土曜日) に慶應義塾大学三田キャンパスにて開催されました。 学会においてこの講演会を企画し, またセンターからの講師として参加したことから, 講演会の様子を簡単にご報告いたします。
この講演会の企画は, 2000年6月にホワイトハウスでヒトゲノムドラフトシークエンシングの記者発表があった際に, 米国内のアンケートで「ゲノムプロジェクトに懐疑的」 という方の割合がほぼ半数に達していたことに端を発します。 また,極く限られた遺伝子と性格の関係など科学的に十分検証されていない事柄が一般に流布されていることも, この一般の方々を対象にした講演会を企画した一因でした。
さて,この2月はじめにヒトゲノムシークエシンシングプロジェクトの成果が論文として NATUREとSCIENCEに公表され, 記者発表も行われたせいか事前の申し込みは250名を超えましたが, 当日参加者は175名でした。 また,学生と一般の割り合いはおよそ1:2でした。
当日はじめに菅原が, ゲノムプロジェクトを理解するために必要な基礎知識を紹介しました。 続いて,国立遺伝学研究所生命情報・DDBJ研究センター長の五條堀孝教授が, 進化の観点からゲノムを見ることの重要性と生命情報科学への期待を情熱的に語りました。 休憩時間をはさんで,情報知識学会の理事であり関西大学の名和小太郎教授が, ヒトゲノム情報をめぐる特許に関して産学官のさまざまな見方を分かりやすく整理して説明しました。 最後に,東京大学大学院情報環佐倉統助教授が, ヒトゲノム計画のメリットとデメリットを整理した上で, デメリットへの対策の考察を行い, さまざまな専門分野さらには研究者と一般社会を「つなぐ」必要性を紹介しました。
それぞれの講演ごとに活発に質問が出,ゲノムが決定された生物種, 特許から見たヒトゲノム情報とその他の生物のゲノムの取扱いの差異, 塩基の変異の影響,ゲノム情報に基づいた生命創生などについて質疑応答がありました。 また,休憩時間や講演会終了後も講師を取り囲んだ議論があったようです。 講演会自体は,予定時間を30分余り越えて13時過ぎに閉会しました。
この講演会では資料代1,000円で資料を配布しましたが, ご自分の資料と別に資料を購入される方が数名現れたそうなので資料はまずは好評であったと思われます。 その後,講演会事務局宛てに10件余りのご意見が届きました。 「ゲノムの記事を読んでも良く分かるようになった」,「第2回を開催してほしい」, 「遺伝研は学生でも見学できるのか,あるいは民間会社でも見学できるのか」, 「秋に一般向けのゲノム講演会を開催したいのでご協力いただけないか」 といったポジティブな評価が多かったのですが,「内容が期待はずれであった」, 「プログラムの時間をまもってほしい」というご批判もありました。 前者は,開催案内で講演会の対象を明確にすることによって回避できると思います。 後者については,プログラムを見て当日次の予定を入れる方もおいでなので, やはりプログラム通り進行することが望ましいということになります。
最後に,座長をお勤めいただいた藤原譲理事, 大変立派な会場を手配していただきまた会場運営も担当していただいた慶應義塾大学細野公男教授と細野研究室の皆様, そして学会事務局の五所吉哉様に感謝致します。